名古屋高等裁判所 昭和56年(う)326号 判決
証人近藤稔の原審公判廷における供述、同人作成のけん銃などに関する鑑定書及び押収してある回転弾倉式改造けん銃一丁(当庁昭和五六年押一二三号の一)によると、右近藤は、愛知県警察本部犯罪科学研究所技術吏員であり、右改造けん銃の鑑定をしたものであるが、右鑑定において右改造けん銃を試射したところ、撃針の打撃力が弱いため、右改造けん銃と一緒に差押えられた実包三発(前同押号の二)(いずれも口径六・三五ミリメートルの自動装てん式けん銃用標準型実包)やこれと同種の既製実包の雷管を起爆させることはできなかつたが、しかし、それらを弾倉に装てんすることは可能であり、右近藤において、右同種の既製実包を分解して発射薬を取り出し、雷管を起爆させたうえ、莢底にドリルで小穴をあけ、平玉(玩具煙火)をその部分に貼り付け、もとの発射薬の約半分を薬莢に詰め、弾丸を装着するという手法で改造実包をつくり(なお発射薬を約半分にしたのは発射実験中にけん銃を破損させないなどの配慮による。)、右改造実包を前記改造けん銃に装てんし、通常の撃発操作を行つたところ、起爆して弾丸が発射され、右弾丸は射距離一メートルで厚さ約一二ミリメートルの杉板一枚を貫通したことが認められる。
ところで、改造けん銃が「銃砲」にあたるか否かの判断は、改造けん銃自体の発射機能の有無によつて定めるべきものであり、これに適合する実包の製造が可能とされる以上、所論指摘の右製造の難易、右製造について専門的知識、技術を要するか否か、あるいは製造された実包の耐用期間、保存期間に応ずる変質の程度如何などの諸点はその判定にほとんど関係がないと解するのが相当であり、前記認定の事実によれば、本件改造けん銃は撃針の打撃力は弱いけれども、既製実包の起爆薬を平玉(玩具煙火)と交換して起爆し易くさえすれば、けん銃自体には何らの補修、改良などを要しないで、通常の撃発操作で起爆して金属性弾丸が発射されるのであり、しかも、その威力からみて人畜に傷害を加えうる能力を有していると推認されるのであるから、右改造けん銃は、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲であり、「銃砲」にあたるものと認められる。